がん特集ページ

子宮がんとは

子宮がんには、子宮の入り口部分にできる子宮頸がんと奥の方にできる子宮体がんがあります。子宮頸がんの多くは子宮の外を覆っている細胞と内側の内膜細胞の入れ替わる境界部分で発生することが知られています。一般に普及している子宮頸がん検診は、この境界部分を中心に細胞を採取して顕微鏡で調べる細胞診で行われています。子宮体がんも細胞診で調べる方法がありますが、子宮の奥のため直接見えず器具が入れにくい場合もあり、また細胞の判定も難しいこともあって検診としては行われていません。

子宮がんの症状としては子宮頸がんも子宮体がんも多くは月経以外の性器出血を伴いますが、初期のうちは症状が出ない場合もあります。子宮頸がんではがんになる前に異形成と呼ばれる細胞の変化の段階を経過している場合が大部分と言われていますが、近年こられの異形成やがん化にヒトパピローマウイルスが関わっていることがわかりました。現在では子宮頸がんの原因になる種類の代表的な16型と18型のヒトパピローマウイルスに対するワクチンも作られています。

子宮体がんの多くは月経ではがれ落ちる子宮内膜の細胞から生じます。卵巣から内膜の細胞を増やす作用のあるエストロゲンと呼ばれるホルモンが出ているにもかかわらず、月経が不規則で内膜が長期間入れ替わりにくい場合や、エストロゲンを補う薬を長期間不適切に使用している場合に子宮体がんが発生しやすくなると言われています。しかし、ホルモンと関係ないタイプの子宮体がんが生じる場合も少なくありません。診察でおこなう超音波検査で子宮内膜部分の厚みが大きく見える場合には、経過をみたり検査が行われています。

子宮がんの治療の基本は手術です。子宮頸がんの前がん状態としての上皮内がんや、その一歩手前の高度異形成では、子宮の入り口部分のみ切除する円錐切除術を行っている場合が多いですが、この手術はそれより進んだ子宮頸がんの部分がないかの確認検査も兼ねています。子宮頸がんや子宮体がんが明らかとなれば、一般的には子宮摘出手術が行われ、子宮体がんでは原則、卵巣も一緒に摘出して調べます。子宮頸がんでは手術をせず放射線治療で治療効果が十分得られる場合が多く、必要に応じて抗がん剤治療も行なわれます。

子宮がんで他のがんと違うところは、妊娠出産される若い年代でも発症する可能性があることです。妊娠出産ができる早期治療の機会は、特殊な場合を除き子宮がん検診を受けることで得られやすくなります。20歳以上の方は2年に1回市町村からの公費で子宮がん検診を受けられる制度になっており、該当する年度に住所のある市町村で受けることができます。

卵巣腫瘍(卵巣がんを含む)

卵巣は子宮の左右両側に存在する片側が約5-15g程度の母指頭大の器官で、その働きの重要なものは卵細胞を成熟させて排卵することと、性ホルモンを分泌することです。卵巣は表層上皮、胚細胞(卵子)、性ホルモンを分泌する細胞と、これらの組織の間にある間質細胞から成っており、これら全ての部分から腫瘍が発生するために、腫瘍の宝庫といっていいほど数多くの種類の腫瘍が発生します。卵巣腫瘍には良性腫瘍、悪性腫瘍以外に、組織学的には良性に近い所見でありながら悪性腫瘍と似た経過を示す境界悪性腫瘍と分類されるものも存在し、卵巣腫瘍の取り扱いをより複雑なものとしています。

表層上皮性の悪性腫瘍には漿液性腺がん、粘液性腺がん、類内膜腺がん、明細胞腺がんが代表的ながんで、多くは50才代に最も多くみられますが、若年者に発生することもあります。

胚細胞性のものでは未分化胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍、胎児性がんが代表的で、ほとんどが35才までの若い女性にみられます。ホルモンを産生する腫瘍としては顆粒膜細胞腫が代表的で10才代までの若年に発生する型と高齢者に発生する型があります。また卵巣には他の臓器のがんからの転移性腫瘍を認めることもあります。もっとも多いのは胃がん・大腸がんなど消化器のがんからの転移です。

卵巣は腟を通して外界と交通している子宮と異なり骨盤内に存在しているために、卵巣腫瘍は自覚症状が出るのが遅く、悪性の卵巣腫瘍は進行してはじめて診断されることが少なくありません。腹部膨満、腹痛、胃腸障害、頻尿(尿が近い)、体重減少などの症状を認めることもありますが、これらは他の病気でもしばしば見られるものであり、悪性の卵巣腫瘍に特異的な症状ではありません。しかし原因のはっきりしない腹部膨満や腹痛などの症状をみたときは、エコー検査を受けたりすることが卵巣腫瘍の発見につながる可能性がありますので、産婦人科の受診をお勧めします。

卵巣腫瘍の診断は内診やエコー検査によって卵巣に腫瘍があることを発見することから始まります。卵巣腫瘍が良性か悪性かの診断にはMRIなどの画像診断や血液中の腫瘍マーカーの測定が行われます。しかし画像診断や腫瘍マーカーで必ずしも良性か悪性かが正確に診断できるわけではありません。卵巣腫瘍が一定サイズ以上になったり、また画像診断や腫瘍マーカーで悪性が否定できない場合は、治療を行うことが勧められます。

卵巣腫瘍の治療の基本は手術です。開腹して最初に腹腔洗浄細胞診を行い、肉眼的に腹腔内の病巣を検索します。腫瘍を摘出し、術中に迅速病理組織検査を行います。境界悪性腫瘍の場合、子宮、両側の卵巣・卵管、大網を切除することが基本となります。さらに悪性腫瘍の場合、それに加えてリンパ節の摘出や、腫瘍の拡がりによっては腸管や腹膜などの合併切除が必要となることがあります。卵巣悪性腫瘍はその種類と拡がり(進行期)により術後に抗がん剤治療の必要性や抗がん剤の種類などが決まってきます。卵巣悪性腫瘍は抗がん剤がよく効くがんのひとつとされており、極く早期のがんをのぞけば抗がん剤治療は必須です。抗がん剤治療は一般的に、2〜3種類の抗がん剤を組み合わせて周期的に投与します。また初回の手術で腫瘍の完全摘出が困難な場合、腫瘍を可能な限り摘出し、組織型を確認した後に抗がん剤治療を行い、残存した腫瘍を小さくしてから根治手術を行うこともあります。

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